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カテゴリ:■ 羊のあくび編( 115 )
|
#115 眠れない夜。
羊は過去の出来事について蟹に聞かれ、
それを聞いた蟹がココロを痛めるだろうと思うと言葉に詰まるのだった。
あまりにも残酷で、当事者でもあり傍観者でもあり、正義そのものを問うものだった。
羊は「過ぎたことに後悔はしないが、忘れることはないだろう。」と言ったが、
蟹は「忘れることができたら羊君のココロが晴れるのに。」と嘆いた。
そうして、これからは全ての災いから羊を守ろうと羊に誓った。

羊は平然として「蟹君、僕は泣かないんだよ。
嬉しい時も悲しい時も痛い時も泣いたことがないんだ。
だって僕は感情を失ったから。そんなもの捨てちまったから。
後は忠実に誠実に余命を償いの気持ちで過ごすだけだよ。」
そんな風に言ってふっと笑うのだった。

蟹にとって感情を失うということがどれほどの衝撃から起こるものか想像ができなかった。
「それでも羊君には普通の幸福を感じる生活を送って欲しい。
僕に何かできるかな。僕は非力だし権力もないし財力もないし、
羊君に勝るものは何もないけど、何でも努力するよ。」

羊は蟹をなだめながら言った。
「蟹君には何も分からないさ。だからそのことに触れないで欲しい。
それに、何でも努力するなんて簡単に言うもんじゃない。
誰かを全て理解することなんて、不可能なんだ。少なくとも蟹君には何もできないさ。」
蟹は自分の非力さを目の当たりにして、
羊の周辺を守りココロを開かせたかつての親友に嫉妬していた。

羊のココロにはまだかつての親友が生きているのだろう、
羊が昔話を語るときに見せる横顔は何処かしら切なそうじゃないか、
そんな気がした蟹は羊にそれとなく聞いてみた。
「羊君はかつての親友のこと、裏切られたとは言え信じているんだね。」

羊は急に少し言葉を濁らせながら咳払いをした。
「かつての親友は友達がたくさんいたが、僕は憎むことはできない。
蟹君だってそうだろう?今までの親友を心底憎むかい?憎みきれないだろう?
みんな同じさ。ただ僕にとってかつての親友は・・・。」
蟹は羊のココロを察したのか、うつむいて下を見た。一方、羊は冷静に話していた。
「僕は特別じゃない。蟹君も探られたくないことや忘れたいことがあるだろう?
それに忘れられない出来事もあるだろう?無理に忘れなくてもいいんだよ。
全部背負って生きてゆくのが正しいと僕は信じている。」

蟹は羊の複雑な性格に戸惑いつつ、正直で真剣な様子を見たら、
やがて安心して眠り始めた。
眠れない羊は窓の外を眺めながら、
「例え一生会えなくてもいい。何処にいてもいい。犬君が元気ならばそれでいいんだ。
象さんも勝敗なんてどっちでもいい。
活動を続けていつの日か再び脚光を浴びるのを待てば・・・。
元気なのかどうか分からないのは僕の兄さんと僕自身だけ。」
そう呟きながら夜の静けさに眠気を待つのだった。
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by hi-lite-7 | 2009-01-15 15:51 | ■ 羊のあくび編 |
#114 暗黒、孤独、懊悩。
羊は象を探しにダムへ出かけると、
思ったとおりに象はダムの渕で立ったまま中を覗き込みながら煙草を吸っていた。
穏やかそうな表情に柔らかい風が吹いて象の伸びた髪の毛をなびかせていた。
そういう姿は象の顔立ちからすると絵になるもので、
さすがにトップに輝く素質はあると羊は感心してしまった。

象は羊に気づくと「やぁ。」と片手を挙げて振向いた。
羊はペコリと頭を下げ、象に駆け寄った。
「やぁ、羊君。調子はどうだ?俺は俺なりに俺の年のわりに頑張っているのさ。
解ってくれとは言わないが、解る人には解る努力を続けている。羊君には解るかな?」
羊は頷きながら腰を降ろすと、象も隣に腰を降ろした。

「犬君と文通しているんですよ。
最初に親友になった頃のように代わり映えのないやり取りをして、
その頃と比べて変わった事といえば、もう僕たちが親友ではなくなり、
二度と会えない宿命に確定しつつあることだけです。
その中で犬君が象さんのことを髭男だと言っていました。
僕は犬君と二度と会えなくても、犬君が幸せならそれでいい。
僕と犬君はココロ通う親友だったけど、同じ人間じゃないのだから、
いつかは別々に生きて行かなければならなかったんです。
犬君が残してくれた形見はあなたです。
象さんの作品は僕の憂鬱に似ているところがあって、犬君の抱えるものにも似ていて、
何だか他人に思えなくて、僕の言うこと分かりますか?僕は無茶苦茶ですか?」

象は次々と煙草に火をつけ、少し羊に分け与え、持論を話し始めた。
「俺は、小さい時から才能があった。
ちょっとした活動を大人の真似をしてみたら本業になっていた。
それはとても恵まれていることだろう。でも青春時代を考えると哀しい気持ちになるのさ。
暗黒、孤独、懊悩。それから戦い続けた結果ライバルなき今は、ただの道化さ。
それもそれで社会に貢献しているんだから、そんなもんだろう。
羊君も暗黒、孤独、懊悩を抱えたまま、戦っているのさ。
そこに理屈はないだろう。矛盾ばかりが目に付いて、大人に腹が立つだろう。
誰にも分からない苦しみがあるだろう。若さゆえの苦しみだと思って満喫せよ。
憂鬱なんて贅沢な悩みさ。切羽詰ることがない証拠だから。」

象は羊の肩を叩き、気分良く大声で歌い始めた。羊はその歌に合わせてギターを奏でた。
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by hi-lite-7 | 2008-08-14 16:00 | ■ 羊のあくび編 |
#113 酔っ払い。
「テレビで象さんを見かけたんだが、犬君は見たかい?」と羊は犬に手紙を送った。
象が髭を伸ばして作業している様子を伝えると
犬はいささか冷やかに「髭男何処に向かってゆくのだろう?」と一言だけ返してきた。
しかしながら、「俺も確認してみるよ。」放送時間をチェックしていた。
犬だって自分の兄のことだけあって、心配しているのだった。

一人、部屋の中で象の書いた本を読みながら羊はあの映像を思い出していた。
象は「酒、酒、酒・・・。」と酔っ払いながら叫んで、髭を伸ばしたまま、髪の毛を掻き毟り、
煙草をもくもくと吹かしていた。
象はアルコールを飲まないので、それがただのパフォーマンスであることは確かであったが、
だとしたら何処までがパフォーマンスなのだろうと考えるところがあった。

「象さんの癖である、髪の毛をやたら振り乱す様子や大声で叫ぶ姿も含めて
象さんの考えたパフォーマンスなのかもしれない。
だいたい象さんは当初は教師を気取ってこの世に旋風を撒いたが、
時期によっては反面教師でもあり、はたまた無所属層でもあり、労働者階級でもあり、
侍でもあり、何にだってなろうとする。
現れる時期によって様々な顔つきで様々なパフォーマンスをしている。
象さんの正体は一体何だろう?
一貫して言えることは、原因不明の現代的な憂鬱さを抱えて嘆いていることだ。」

羊は象を思う度に憂鬱な気持ちになった。憂鬱なときはやたら煙草がうまいので、
羊は真夜中だというのに煙草を吸いながら犬に手紙を送り続けた。
象は行方不明で、見かけ次第連絡することになっているが、
羊は象を見かけても連絡しなかった。
例えそれで羊が迷惑を被ったとしても羊は本望だった。
ダムに沈む時はなるべくみんな時間を合わせて一緒に沈むことが美徳であり、
孤独と憂鬱は戦う男の醍醐味だとココロから信じていた。
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by hi-lite-7 | 2008-07-22 13:30 | ■ 羊のあくび編 |
#112 銀の玉。
羊には羊なりの誰にも解ってもらえない憂鬱さがあり、
それと戦いながらなるべく人に悟られないように日々を過ごしていた。

誰もがそうであるように、みんな悩みが尽きないのであった。

羊の苦しみはあくびとなり、それを我慢したり噛み殺したりしてみたり、
人のいないところで深呼吸をしたり、とは言ってもそれで苦しみがなくなるわけではなく、
トンネル論となる。

羊は自分が生まれた頃のことを思い出すときに必ず兄さんのことを考えるのだった。
生まれたといっても誕生日ではなく、
羊に自我が芽生えて羊としての宿命に気づいた頃のことであり、
兄さんを探す目的で孤独な旅に出かけたり、いろんな悩める人と出会ったり、
そういうようなことだった。

そして今日もまた悩み始めた羊は、キラキラ光る鉄の玉をはじきながら頭を整理していた。
今の問題は何と言っても蟹のことだった。
他の人はみんな孤独に慣れているから一人でも平気なのだが、
蟹ときたら「僕の人生は羊君あっての人生。
羊君は何もしなくていいからそのままで何も変わらず生き続ければそれでいい。」
と言いながら勝手に夕食を作ってくつろいでいるのであった。
そんな蟹を羊も平常心で匿うことができず、ついつい面倒を見てしまうのであった。

それはそれで、羊は憂鬱であり、それは誰にも解ってもらえず、
憂鬱の種は頭の中で腫瘍のように腫れ上がり、腫瘍は消えない傷となった。
「誰もがそうであるから仕方がない。」と羊はぼやいた。
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by hi-lite-7 | 2008-06-25 10:22 | ■ 羊のあくび編 |
#111 光。
「羊君にも光が射すように。」その声は象だった。

そう、スクリーンの中で物思いにふけている象に羊がエールを送ったところ、
象は象でそんな羊の何らかの修羅を感じたようで、象は羊を案じていた。

羊はあくびを我慢しながらかろうじて象を見つめた。
「象さん、僕はもう消えてなくなるかもしれない。
何もかも忘れて新しい道を歩みだすかもしれない。
象さんのことも、かつての親友だった犬君のことも、僕自身の広がった夢も、
僕の全てが全部仲良くダムの底さ。
沈む時に一緒じゃないから、なるだけ一緒に沈めるようにみんなの行動を見ながら、
ゆっくりと、ゆっくりと・・・。」

「何を言っているんだ?羊君は疲れているだけだよ。
悪い大人や訪ね人に囲まれて、ちょっと身動きが取れないだけだよ。
このまま流されていけばいいさ。深刻に考えないで、もっと気楽に陽気に過ごせよ。」

「象さん、その言葉はあなたも同様ですよ。」
羊は象に煙草を勧め、象も羊に煙草を分けた。
人々に降り注ぐ光が平等でないことを、羊はやりきれない思いで胸にしまい込んだ。
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by hi-lite-7 | 2008-06-05 09:13 | ■ 羊のあくび編 |
#110 孤独な思想家。
薄暗い作業室で取り巻きに囲まれながら、
一人孤独に頭を抱えて考え事をしている象の映像が一瞬テレビに映った。
象はもくもくと煙草を吸い、ぶつぶつ何か言いながら髪の毛を掻き毟っていた。
「化け者・・・怠け者・・・。」という声が聴こえた。

その時は深夜で羊は偶然にも久しぶりにスクリーンの象を見たのであった。
犬に手紙を送って象の様子を知らせるべきか少し考えながら、
結局ためらってしんしんと映像を見つめていた。

象はまだ活動しているのであった。
例え誰も見ていなくても象にはこの道しかないのであった。
象はそのことを承知で、自分が道化でも何でもいいとすら思って意固地になって、
周りの空気を読めないことも気が付いていながら
それでも使命を果たさなくてはならないので、
死ぬまでの少しの時間をこうやって過ごし行くのであった。

象は新刊を発表したものの、それがちっとも話題にならず、
過去の栄光ばかり取り立たされては派手なパフォーマンスを繰り返し要求され、
若い頃はエネルギーがあって何とか乗り越えられたものの、
もうこの年になるとだいたいの人間が落ち着いているに、冷やかしに応じず、
象はまだまだ棘の道を突っ走る青年の如く、恐れを知らず、安定を求めず、
昔からのすでに時代遅れのことをやっていた。

「かつての親友だった犬が見放すのも無理がない。
支持者は残り少ないのに象さんは無茶をしている。これ以上の無茶は見ていられない。
客観視しては気の毒だが、象さんが本当に見ていられない。」
羊のそんな気持ちは次第に膨らみ、小さな疑問として残り、
申し訳ない気持ちは強くなるばかりだった。

羊はテレビを見ながら「どうか象さんに光が射すように・・・。」とココロの底から思っていた。
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by hi-lite-7 | 2008-01-23 12:34 | ■ 羊のあくび編 |
#109 昔の親友。
数日経ってその間羊は蟹と遊びながら自分の人生について深く考える機会が増えていた。
羊は蟹がわりと気を使ってくれたりペースを合わせてくれたりするので、
そういう時間を犬との生活と比べながら、それはそれで良いのかもしれないと思っていた。
それからもしかしたら生涯の友達であり親友となるべき人物は蟹かもしれないと思うと、
それもそれで仕方のないことなのかもしれないと思っていた。

夜中になると犬からの手紙が届いた。
内容は人生についてと犬の生活と世論と、それから象のことだった。
犬は象にはすでにカリスマとなる要素がなくなっていると断定していた。
羊もそれを何となく感じていたからか、複雑な思いで手紙を読んでいた。

「手紙かい?こんな深夜に誰から?」
蟹が羊に尋ねたので
「昔の親友からだよ。世論ばかり述べている。自分勝手だが面白い人間なんだ。」
羊はそう言うと手紙をたたんでしまった。

蟹は羊の横顔を見つめながら少しずつ聞いてみた。
「羊君の昔の親友って、そんなに面白い奴だったのかい?
どうして親友じゃなくなったの?今でも手紙が届くって事は仲良しなんだろう?
羊君にとって昔の親友とは・・・。」

羊は犬のことを思い浮かべながら少しだけ蟹に話した。
犬の人格を明確に現すような過去の事件や、犬の交友関係や、
その中の羊の位置づけについて聞かれるがままに答えた。
けれども、羊自身がどのように接していたのかは上手に説明ができず、
時折言葉を詰まらせたり咳き込んだりしながら、核心には触れなかった。
蟹は聞いているうちに内心不安がよぎりそうになり、蹲って目を閉じた。

「羊君の昔の親友と羊君には、俺が羊君を見かけるよりもずっと昔から仲良しで、
二人だけの歴史もあって、憎んでも結局仲直りしてしまうんだね。
俺と羊君はまだまだ仲良しではないから、
そういうことは知りたいけど知れば知るほど怖い気もする。俺には何も長所がないから。」

羊は蟹の隣に座り込んで静かに言った。
「そういう考えは間違っているよ。確かに僕は昔の親友に思い入れがある。
今だって甦って来て見かけるようになったら、きっと何もかもを投げ出して駆け寄るだろう。
でもそういうことはもう起きないんだ。もう期待しないんだ。
裏切られた事実は消えないし、遠い街で楽しく暮らしているようだし、
二度と会わない運命なんだ。
第一、蟹君自身が自分に長所がないなんてバカげたことは言うもんじゃない。
僕と親友になりたいんだろう?だったら蟹君なりに言葉を行動に起こさなくちゃ。」

蟹は羊の目を見て、羊は蟹の肩を叩き、時間は真夜中になり、
これから始まるいろいろなことを乗り切るためのココロの準備をしていた。
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by hi-lite-7 | 2008-01-04 12:29 | ■ 羊のあくび編 |
#108 真夜中のヒーローたち。
夜中になって、いつものとおり眠れない羊は、一日の出来事を思い出しながら、
気持ち良さそうに寝ている蟹を眺めたり、隠れて煙草を吸ったりしていた。

その日蟹は自分が調査されていることを何となく知っていることを羊に語り
「俺では羊君の友達なんて無理なのかな。」と呟いていた。
「どうかな。」羊はそう答えるしかなかった。

時代の流れがあっていろんな権力社会があって、蟹にも蟹社会があって、
ネットワークがあって、蟹の存在は蟹社会の中では、羊の羊社会における立場に似ていた。

そんなことを思い巡らせながら小声で象を呼んだ。
「象さん・・・象さん・・・僕が間違っているんでしょうか?
孤独と勝負こそが男の美学と象さんは教えてくれたけれど、それが全てでしょうか?
それは象さんの持論でしょうか?」

「やぁやぁやぁ羊君。落ち込んでいるね。
俺も不調だけど、何というかこういう季節は憂鬱さに拍車がかかる。」
羊は象に煙草を勧めながら、はい、と答えた。

「羊君はやらなくちゃならないことがあるだろう?
蟹君と遊んでいるうちに忙しいのを理由にして羊を数えていないだろう?構わないけどね。
羊君が自分の夢を追いかけるよりも、蟹君と遊んでいるほうが楽しいのであれば
それもいいだろう。でも頭の片隅には覚えておかないといけない。
羊君は権力社会に生きてゆくと誓ったのだから。何も焦ることはないさ。
今は休養期間だよ。3等級金貨を入手したばかりだから休養してもいいんだよ。
いつ復帰するのか、もう復帰しないのか、それも全部羊君次第だよ。
羊君は充分よくやっている。誰も知らなくても俺は見ているさ。」

そのとき、真夜中だというのに犬から手紙が届いた。
象の新刊を買ったか、もし買ったら感想を聞きたい、そのような内容だった。
愛想を付かせたとはいえ、犬も自分の兄のことは心配なのだろう、と羊は思った。

「ところで象さん。僕は何となく分かっていたことだけど、
蟹君がよりによって僕に拘る必要はないんだ。引き寄せたわけではない。
蟹君は単純に友達が欲しかったんだ。僕に魅力があったわけではない。
僕がひとりぼっちでいるところを目撃して、何となく気が合いそうな予感がしただけだろう。
いつしかすっかり仲良くなってしまったが、本当は蟹君にはちゃんとした人格で、
なおかつ相応しい人間と友達にならなくちゃならない。そう思うんだよ。」

象は複雑そうに笑いながら小さな口笛を吹いた。それからメロディに乗せながら歌った。
「羊君の友達に最も相応しいのは俺の弟である犬だろう。
勝手気ままな犬にとっても羊君しかいないだろう。でももう手遅れだろう。
壊れた友情は取り返しがつかないのさ。」

象がふっと消えたとき、蟹が少し目を覚まし、不思議そうに羊を見つめた。
「羊君、誰かと話をしていたの?誰かから手紙でも届いた?
羊君、もう真夜中だよ。どうして眠らないの?」
羊は冷静に答えた。
「蟹君みたいにすやすや眠れないから寝ないんだよ。
蟹君には分からないよ。僕は簡単に辛いとは言わないけれど、
本当はいつも蟹君が気持ち良さそうに眠っているのが羨ましいくらいなんだ。
だから、どうして眠らないの、なんて残酷なことを聞かないでくれ。」
羊はなぜ自分がこんなに蟹に冷静なのか自分でも不思議に思った。

羊が蟹に背を向けると、蟹は羊の肩を抱いて、ごめん、と言った。
羊は何度か蟹の手を振り払いながら、無駄にあくびが出そうなのを我慢していたが、
やがて諦めて蟹の言うとおりに横になった。それからいつの間にか朝になった。
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by hi-lite-7 | 2007-12-20 12:30 | ■ 羊のあくび編 |
#107 調査と準備。
ここのところ、蟹が何も知らないで話しかけてくるのを、
羊は気の毒に思いながら相槌を打っていた。

蟹は羊にココロを許し可能性を見出し始めていた。
一方羊は相変わらず他人様の世話になることには抵抗があったが、
蟹が羊に施すことで蟹自身が楽しそうなので、
細かいことは気にせずに蟹の好きなようにさせていた。
但し、蟹は何も知らないことだけが気がかりだった。

また、訪ね人が一方的に進めている蟹の正体の調査は続いていた。
そして、蟹の明らかになってゆく蟹の実力と権力と血統、訪ね人は羊にその事実を述べた。
「蟹君という人物、かなりの凡人というよりも、何かを望むことも不可能な立場の中であり、
多少本人に実力があるものの発揮できないだろう。蟹君本人に野心がないからだ。
つまり羊君にとって階級違いの友達という判断が妥当である。
もしかしたら、それなりの圧力もかけるかもしれない。蟹君次第だ。
それからもし羊君が本当に友達が必要ならばこちらから派遣することもできるから、
羊君は安心するように。羊君にはもう心配の種を増やして欲しくないんだ。
くれぐれも勝手な行動だけは控えるように。」

羊は、そうですか、と小さく頷き訪ね人を帰した。
蟹の詳細など羊はすでに何となく知っていたので、たいして驚くことはなかったものの、
訪ね人の言う圧力というのが気になった。
羊は蟹の履歴も知っていたし、それが羊にとってにとって重要かどうかは分からないけれど、
不利なことではあった。それを知っていて黙っているのは可哀相なことであった。
「羊君、俺たちはきっといい友達になれる。親友になりたいんだ。」
そう言いながら笑っている蟹を見ていると、羊は申し訳ない気持ちになって背を向けた。

最近の羊の身にはいろんなことがよく起きる。
いずれ少年から青年にならなくてはいけないので、それなりの準備が始まっているのだろう。
その変化は羊にとっては多少覚悟していたものの、
やはり何処か他人事のような気がしてならなかった。
複雑に迷い始めたココロの行方をどうすれば納得できる方向へ持って行けるのだろうか。

それはいろんな準備に差し掛かっている蟹にとっても同じ問題を抱えているはずなのに、
蟹は問題意識のようなものもなく、ただ呑気に日々を送っていた。
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by hi-lite-7 | 2007-12-13 12:32 | ■ 羊のあくび編 |
#106 優しさ。
蟹は羊に真剣に話をするのだった。
「羊君はもっと俺を頼るべきだ。俺が羊君に頼るように、何も遠慮せず、何でも頼るべきだ。
羊君は悩み事の一つも相談してくれないし、何を背負って生きているのか分からない。
それが羊君の魅力だけど、僕はもっと羊君を知りたいと思うからこうして側にいるのだから。
この前だって思いに耽って眠れない様子だったが、羊君はその理由を言ってくれない。
時々僕は羊君を怒らせているのではないかと思うことがある。
羊君が黙り込んで何かを考えている時に、何を考えているんだい?」

羊は遠慮がちに「煙草、いいかな?」と蟹の了解を得て、煙草に火をつけた。

「僕の悩み?あるといえばあるけれど、ないといえばないのさ。
厳密に言えば悩みが尽きないのだよ。
しかしそれは蟹君に解決できるようなことじゃない。僕自身が解決しなくちゃ意味がない。
それに触れると僕自身の核となる人格の全ての肯定になるかもしれないが、
恐らく蟹君の目から見れば否定になるだろう。
誰にでも触れないで欲しいことがあるだろう。だから、蟹君は心配しなくてもいい。
蟹君がここにいたければいればいいし、僕にうんざりしたら他の友達を当たればいい。
僕は一人でも生きてゆけるし、そのつもりで準備をしていたから構わないんだ。」

「羊君、そんなことを言うもんじゃない。羊君は一人で生きてゆく訳がないんだ。
ちゃんとした普通の幸福の手段を理屈では知っているんだし、
実行しないだけで普通のことはちゃんとできるし、
僕だって力になるし、僕が力不足なら羊君こそ友達を見つけて生きてゆくんだ。」

羊は蟹の買いかぶりと勘違いに頭をひねりながらも
「蟹君の悩みは、僕の存在なんだね。つまり僕が幸福じゃないとダメだと。
それも、僕の価値観によるものではなく、蟹君の思う形の幸福を。」
と笑いながら言った。

そして、羊はゆっくりと煙草を吸い少し微笑みながら付け加えた。
「蟹君のおかげで、以前より随分幸福の手段は要領を得た。
いつも望んでくれてありがたいと思うよ。蟹君は優しいから。」

優しさには何種類かあることを羊は注意深く観察する癖があった。
偽善の優しさ、計算上の優しさ、八方美人的な優しさ、下心の優しさ、
その場しのぎのウソの優しさ、それと何も代償を求めない無償で究極の優しさ。
羊は蟹の優しさの目的が分からず、時々首を傾げるのだった。

羊が求める完璧な親友は、究極に優しい人間だけである。
蟹は羊に、より立派な親友になってくれることを望んでいるだろう。
それが無償の優しさに繋がるかどうかは今の羊にとって難問であった。
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by hi-lite-7 | 2007-11-29 12:32 | ■ 羊のあくび編 |
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