「それにしてもいったい何がどうなっているのだろう?
そして何処に妥協点があるというのだろう?」
羊は部屋に戻り溜息混じりに嘆くのだった。
羊はさっきまで自分の周囲の人と話さなければならなくて、
仕方なくあれこれと話を聞いていたのだが、生活や生き方を頭ごなしに否定されていた。
こっそりと羊飼いになる予定の羊であったが、思わぬところに大きな障害があったのだ。
羊は自分では二つ以上の世界を住み分けているつもりであるが、
昔から邪魔されたり冷ややかな視線に囲まれるのは日常茶飯事で、逃げ出せずにいた。
だからこそ、こっそり羊飼いになって、象の故郷へ逃げ込むのだ。
それまでは苦労ばかりだろうが、象が一人で象使いになれたように、
羊は一人で羊飼いになる必要がある。
そこでひとしきり頭を抱えたが、誰も解決してくれるわけではなく、
自分への言い訳になるだけなので、ココロ新たに羊を数えて眠った。